検察に起訴され、刑事裁判を待つ状態の被告人は、多くは拘置所や留置場に閉じ込められた状態にあります。
逮捕以降、ずっと勾留されているのが多くの被告人です。
ただし起訴後に裁判所に請求すれば、保釈が許可されることがあります。
保釈が許可されると被告人も塀の外に出られます。
ですが保釈にあたって、多くの条件が付けられます。
保釈に付けられる条件と、それに違反したときの被告人の不利益について見ていきます。
保釈の条件にはなにがある
保釈は、被告人から請求し、保釈担当の裁判官が許可を出して初めて実現するものです。
検察が反対意見を出している場合は裁判官も許可を出しづらく、その場合は弁護人が裁判官に交渉するなど努力して、なんとか保釈の実現を図ることとなります。
保釈が実現しても、その際には保釈条件がなにかしら必ず付きます。事件ごとに条件が付け加わることもあります。
せっかく保釈で自由の身になれたのに、特に難しくもない条件に違反して保釈を取り消されるのはばかげています。きちんと守らなければいけません。
保釈条件を確認しましょう。
保釈金を支払う
まず、保釈金です。被告人の罪状や、財産などを考慮して、保釈担当の裁判官が個別に設定します。
保釈金は保釈の条件というより、保釈の具体的効力発生のために、必須の手続きです。
保釈金を納付しない限り、保釈請求が認められていても、外には出られません。
保釈金を納付するのはもっぱら弁護人の仕事です。
保釈請求の準備とともに、お金の準備も早めにしておく必要があります。
被告人にお金がなく、日本保釈支援協会から借り入れる場合も、早めに準備しておかないとどんどん保釈が遅くなってしまいます。
保釈支援協会への借入れの申込みは、起訴前でも可能となっています。
担当弁護人には、起訴後すぐに保釈請求できるように、そして許可が出たらすぐ納付をできる迅速な仕事が期待されます。
身元引受人
保釈の条件として、身元引受人を求められることもあります。
法律上の要件ではないものの、保釈決定の場合の多くで、身元引受人が求められます。家族でも構いません。
身元引受人の役割は、被告人の証拠隠滅、逃亡を防ぎ、裁判所への出廷を監督することです。
というと責任重大のようですが、実際に被告人が条件に反したときに、身元引受人が罰則を課せられるなどということはありません。形式的な責任を負っているといえるでしょう。
逃亡しない
保釈中の被告人は、その後裁判で無罪となる可能性もあります。ですが日本の司法においては、、有罪確実でない人は検察が起訴しません。
起訴された人のほぼ100%が有罪となるのが実情であり、そしてこの中には執行猶予がつかず実刑の人もいます。
確実に刑事裁判を開廷するため、逃亡してしまう可能性の高い被告人は保釈を受けられません。
保釈された被告人の逃亡を防ぐものは保釈金です。裁判が終われば保釈金が返ってくるというのが、被告人にとっての逃亡抑止力となっています。
被害者と接触しない
被害者との接触とは、「お礼参り」を指します。
自分の犯した罪に基づいて起訴されているのにも関わらず、逆恨みによるお礼参りをする加害者がいるわけです。これを避けるため、被害者との接触は禁じられます。
接触が禁じられている以上、「謝罪に訪れる」のもダメです。謝罪は手紙等でしましょう。
証拠を隠滅しない
起訴された以上、検察側に証拠はおおむね出揃っています。ですが被告人がその気になれば、証人に圧力を掛けたりすることもできるわけです。
当然、そういった工作は禁止です。
気を付けたいのは、被告人に共犯者がいる場合、共犯者との接触も、保釈条件としてほぼ禁じられることです。
共犯者とは、仲間としての通常の接触も禁じられます。
無断での引越しや旅行をしない
保釈は、住所が明確でない人には認められないものです。
保釈が認められてからも、居場所は明確にしておかなければなりません。当然、無断での引越しはできませんし、届け出た自宅を留守にして出歩いているのも許されません。
旅行も、1泊2日ぐらいであれば無届けで構わないもの、それより長い旅行や海外旅行の際には必ず裁判所の許可が必要です。
日本の法律が直接及ばない海外への旅行に許可なく行ったとしたら、これは逃亡だと判断されても仕方ないでしょう。
保釈条件を破ると保釈取消も
裁判所から出された保釈条件を破ると、保釈が取り消されます。
取り消されるということは、保釈前の状態に戻るということなので、拘置所や留置場に再度収監されてしまいます。
そして保釈金も全部または一部が没収されます。
日産会長だったカルロス・ゴーン氏も、海外に逃亡したことにより15億円の保釈金は当然に全額没収されました。
保釈取消を受けた事実は、判決にも必ず評価されるでしょう。
つまり、罪がさらに重くなるわけです。