刑事事件で逮捕後勾留され、ずっと留置場や拘置所に入れられている被疑者も、起訴されて被告人になると、保釈で外に出る機会がやってきます。
保釈請求が裁判官に許可されないとなりませんし、保釈金を納付する必要もありますが、それさえ済ませば後は外で自由に行動できます。
さて保釈の際に納付した保釈金は、最終的には返してもらえるものです。
いつ返ってくるのかを確認しましょう。ただし保釈金の全部または一部を返してもらえない場合もあるので、そのケースと理由も見ていきます。
保釈金はいつ返ってくる?
保釈金の金額は個別に決定されます。
罪状だけでなく、被告人の財産や人柄など多くの要素で個別決定されるため、数百万円など高額になるケースもあります。
ただ高額だとしても、保釈金は一時的に納める性質のものなので、最終的には納付者(被告人以外の第三者の場合もある)の元に返ってきます。
保釈金を被告人に課す目的は、刑事裁判を確実に開廷することにあります。外で違反行為をしなければ保釈金が返ってくる仕組みにより、間接的に被告人の逃亡、証拠隠滅などを間接的に阻止するのです。
保釈許可が出る際には、「きちんと裁判に出頭すること」その他が条件として付けられています。被告人が保釈条件をきちんと守っていたのなら、納付した保釈金は全額返ってきます。
保釈金の返還時期を確認しましょう。
保釈金の返還時期は裁判終結後
保釈金に重要な役割があるのは、刑事裁判が終結するまでです。裁判終結後はもはや役割を終えたので、裁判所に請求すれば自動的に返還されます。
判決が確定することで返還されるのであり、判決の内容は保釈金の返還とは関係ありません。
実刑判決でも執行猶予でも、あるいは無罪でもこれは同じで、納付者の元に保釈金が返ってきます。
裁判終結後最大1週間で返ってくる
保釈金の返還時期は、裁判終結後最大1週間です。これは純粋に、裁判所の事務処理に要する時間であって、早ければ数日で返還されるものです。
1審の結果に不服があり、被告人側、検察側どちらかあるいは両方が控訴して、上級審の判断を仰ぐことも普通にあります。この場合の保釈金返還時期は1審終了後ではなく、すべての裁判が完結したときです。
1審で実刑判決が出ると、それまで保釈されていた被告人は再収監されます。
その後、まれに再保釈が認められることもあり、この場合は再び保釈金を納めて外に出ます。
この際、最初の保釈金にもまだ働きがあるわけです。
最初の保釈時の保釈金も、再保釈時の保釈金も、裁判終了後の請求によって一緒に返ってきます。
実刑判決が出て刑務所に行く場合でも返ってくる
裁判の終結により、被告人の実刑判決が確定することは、ごく普通にあります。
この場合でも保釈金は返ってきます。
懲役や禁固刑として刑務所に収監される場合、被告人の収監が確認されたのち、保釈金が納付者に返ってきます。
納付時に届け出た口座に返金
保釈金は通常、口座振込により返金されます。
この口座は、納付時にすでに届け出ています。
弁護士が保釈請求と納付を担当する場合は、その弁護士口座に返金されるのが普通です。
さらに、ここから弁護士費用が引かれた上で、保釈金負担者に返ってくるのも通常です。
保釈金は全額返ってくる?
次に、返還される保釈金の額についてです。
保釈金が全額返ってこないとしたら、すべて被告人に責任があります。
保釈中の過ごし方に問題があったためです。
全額戻らない保釈金も重大事ですが、もっと大きな問題は、保釈条件違反により判決の内容が確実に悪くなることでしょう。
基本は全額返還
刑事裁判が終結すれば保釈金は全額返還されることが基本で、保釈が取り消されることがなかったのであれば全額戻ります。
ですが、全部あるいは一部が返ってこないことがあります。
これを保釈金の没取(ぼっしゅ)といいます。要は没収のことです。
保釈条件に違反した場合、一部または全部の没取
保釈金の全部または一部の没取が行われるのは、被告人が保釈条件に違反したためです。
保釈金の没取というペナルティが課されるわけです。
保釈自体も取り消されるので、拘置所や留置場に逆戻りです。
条件を守っていればなんの問題もなく全額返ってきますが、次のような違反行為があれば、保釈取消、保釈金没取の可能性があります。
- 被害者に接触した
- 共犯者に接触した
- 証人に接触した
- 裁判所の出頭指示に従わなかった。
- 無断で転居した
- 無届で2泊3日以上の旅行に出掛けた
これらの行為はすべて、円滑な刑事裁判の妨害となります。
保釈取消とともに、裁判官の裁量により保釈金の一部が没取されます。
没取された保釈金は国庫に入る、つまり国の収入になります。
ちなみに「逃亡」を図った場合、これは一部没取では済みません。全額没取される可能性が大でしょう。
刑事裁判制度、保釈制度自体の根幹を揺るがす行為だからです。